Fake・中編
窓際から朝の光が差し込んでくる。
光を受けて、生成り色のシーツが、眠る刹那の肢体に沿って、
複雑な陰影を作り出していた。
網膜を優しい光に刺激され、刹那の意識が眠りから覚めていく。
瞼を微かに震わせた後、ゆっくりと双瞳を開いた。
俯せ気味に寝ていた体を起こすと、
肌触りのよいシーツが、背中からさらりと落ちた。
シーツと同じくらい、滑らかさを感じる褐色の肌が露わになる。
体のあちこちに、散らばる刻印の他には、
昨晩の情事を感じさせるものは、体には残っていなかった。
落ちてそのまま眠ってしまった自分を、いつものようにニールが清めてくれたらしい。
刹那は苦笑すると、シーツを引き寄せ、再び枕に顔を埋めた。
日差しが心地いい。
このまま再び眠ってしまおうかと、目を閉じた時だった。
寝室のドアノブががちゃり、と音を立てた。
刹那が驚いて起き上がる。
「起こしたか。悪い、刹那」
「いや、起きていた」
まだ、寝てるかと思ってたよ。
ニールは中に入ってくると、ベッドの端に腰を下ろした。
「体、辛くないか?昨日は大分無理させちまったから」
ニールが気遣って、刹那の頬を撫でる。
その手をとって、刹那は首を振った。
「大丈夫だ」
ニールは良かった、と言って刹那の頬にキスすると、立ち上がった。
「忘れ物を取りにきたんだ。
お前、今日は授業はないだろ?もう少し休んでろ」
ニールは部屋の奥のライティングビューローの引き出しを開け、
なにやらごそごそと捜し始めた。
「ニールは、今日は遅いのか?」
「いや、今日は早く帰れる。レポートは昨日出したからな」
今日は、整理だけだ。
ニールは背中をむけたまま、刹那に答えた。
ニールはここしばらく、レポート作成に忙しく、毎日帰りが遅かった。
昨晩の帰宅時間は、珍しいくらいだった。
「なら今日の夕飯は、お前の好きな物を作る」
何が食べたい、と刹那は聞いた。
あちこちの引き出しを開け、ようやく目的の物を捜し当てたニールが振り向く。
「そりゃ嬉しいな。だがどうしてだ?」
「うまくいきそうなんだろう、レポート」
その祝いだ、と刹那は言った。
「よく分かったな、さすが刹那だ」
ニールは嬉しいよ、と言って、刹那に食事のリクエストをした。
頷く刹那にもう一度笑顔を返すと、再びベッドサイドに戻ってくる。
ベッドで体を起こして、自分を見つめている刹那の顎をとると、
体を屈めて、今度は唇を重ねた。
「ん…」
刹那がニールの首に腕を回す。
「……行ってくる」
「ああ。待っている」
口づけの後、交された言葉に、ニールは頷くと、
じゃあな、といって寝室を出ていった。
ニールの姿が消えたドアに、刹那は微笑むと、窓に視線を転じた。
外は抜けるように高く青い空が広がっている。
穏やかな一日が、今日も始まる。
ライルと別れてから2ヶ月がたつ。
刹那が望んでいた通りの生活が、ここにあった。
ライルから別れを告げられた後、刹那はこれからの事を考えた。
あの部屋にはもう、戻ることはできない。
とりあえずティエリアの所に身を寄せようかと、考えもしたが、
そうするとライルとの経緯を話さないわけにはいかなくなる。
ティエリアは刹那の親友で、ライルのことを心良く思ってはいない。
2年間の恋人生活で、何度も浮気をし、その度に刹那を苦しませてきたからである。
これを知ったら、ティエリアのことだ、ただではおかないだろう。
自分のことでライルの心をこれ以上煩わせたくはなかった。
あてどなく、街をぶらつきながら、
いつしか刹那の足はニールの部屋へと向かっていた。
深夜の突然の訪問だった。
ニールは何も言わず、刹那を部屋に入れてくれた。
その顔を見たとき、刹那の中で抑えていた何かが、堰をきって溢れてきた。
自分に縋りついて、突然泣き出した刹那を、
ニールは何も言わず、抱きしめてくれた。
ライルと別れた、と言う刹那には、
「そうか」と返しただけだった。
理由も何も聞かなかった。
そして自分が落ち着いた頃を見計らって、ここにいろ、と言ってくれた。
その後の事は、全てニールが取りはからってくれた。
ライルと顔を合わせることを躊躇う自分の代わりに、荷物を引き上げ、
本来なら終わりだった交歓留学の期間を半年延長してくれた。
刹那の心情を慮っての行動だった。
共に暮らし始めて1ヶ月がたった頃、二人は結ばれた。
レポートの完成を祝った夜、二人はいつものように肌を重ねていた。
淡いグリーンのシーツに取り替えられたベッドの上。
刹那は足を抱え上げられ、腰を打ち付けられる。
ゆっくりした動きで揺さぶられながら、視線が宙をさまよった。
「どうした…?」
どこか視点の合わない刹那に、気がついたニールが声をかけた。
「なんだ…これは…」
「キツいのか」
「違う…」
刹那は首を振った。
振りながら無意識に、自分の指を軽く噛んで、ニールの動きを追う。
「じゃあ、なんだ?」
「あ、ま…って」
揺さぶる動き止めないまま、話しかけるニールを刹那が押し留める。
今までにない感覚が、下肢に広がる。
ニールは待てない、と言うと、大きく腰をグラインドさせた。
「ふあっ…あ…」
刹那の口から喘ぎが零れる。褐色の肢体がくねった。
その反応に気を良くしたニールは、腰の動きを更に早くしていった。
「あっ、あっ…あ…っ」
信じられない程、気持ちが良かった。それしか感じない。
今までも快感は感じた。だがそこには多少の苦しさが伴っていた。
圧迫感のような感覚。本来は挿入の為の器官ではないのだ。
なのに今はそれが全くない。繋がった部分が熔けていくような、
甘い疼きがあるだけだった。
刹那はその感覚に身を委ね始める。
宙に浮いた足が、跳ねるように上がった。
「気持ちいいか?刹那」
「あ…い…いっ…あ、あ…」
「自分でも動かしてみろ。合わせてやるから……
もっと気持ちよくなれる」
優しく囁かれ、刹那は揺らめくように腰を動かした。
刹那の腰のリズムに合わせるように、ニールが自身を突き上げてくる。
刹那が引けば、追いすがるように。
突き出せば、押し込めるように。
ぱんぱん、と肉同士がぶつかる乾いた音と、
繋がった部分から漏れるぐちゃぐちゃとした音が、刹那の耳を犯す。
内壁を固い肉で蹂躙され、中のこりこりとした前立腺を擦られる度、
背中を電流のような快感が走り抜けた。
「二ー…ル…あっ…ニールっ…も、う…!」
背中に指を食い込ませて、刹那が強請った。
刹那の体の悦びを表すように、その分身は互いの体の間で固く尖り、
ニールの腹を先走りの粘液で濡らしていた。
「こっちも、欲しい…?」
荒い息をつきながら、ニールは片手で、刹那の分身を握りしめた。
「あっ…それ…もっ…ああっ」
先端を指で擦られ、刹那の背中がしなる。
ニールに腰を突き出すような形になった。
ニールは刹那の分身を扱きあげながら、一際強く腰を打ち付けた。
「あっ、あ、ああ――――っ!」
甘い悲鳴を寝室に響かせて刹那が達した。
収縮する粘膜の動きに、限界を迎えたニールも、刹那の中に精を放った。
「ふ…っ…」
広がっていく生温かい感触に陶然となりながら、
刹那は降りてくるニールの唇を受けとめた。
行為の後、
そのまま眠ってしまった刹那の体を胸に抱き寄せながら、ニールは思う。
交歓留学の初日に、刹那と出会った。
自分が刹那に魅かれたように、刹那も自分に魅かれた。
その気持ちに嘘はない。
留学が終わる日に、どちらともなく唇を重ねた。
会うのはこれで最後だと、互いに分かっていたからだと思う。
刹那は弟の恋人であり、まだ弟を思っていたから。
だから淡い思いのままでいた。刹那も同じだっただろう。
刹那がライルと別れたと言って、自分の部屋に来た時も、
ライルの頭が冷めた頃を見計らって、仲を取り持つつもりでいた。
それが、ここまでの関係になってしまうとは。
共に過ごすうちに、自分にそれができなくなった。
ライルと同じように、自分も刹那に本気になってしまった。
手を伸ばして、刹那に受け入れられて、体を重ねて、
その思いは更に強くなった。
そして程なくして気がついた。
刹那が自分をライルと比べ、重ねて見ていることに。
刹那自身は自覚しているのかわからない。
だが彼は自分の中に、理想のライルを見ている。
おそらく自分は、恋人がこうであったらいい、と刹那が考える通りの人間なのだろう。
それがライルと同じ顔、姿、声であれば、重ねて比べるのも仕方がない。
(それでも構わないんだ、俺は)
重ねられても、比べられたとしても。
このまま過ごす内に、必ず変っていく。
刹那の中からライルの姿はやがて色褪せ、自分を見てくれるようになる。
それは希望や願望ではなく、必ずそうしてみせる、という決意だった。
ニールの望む色合いでなくても、刹那が自分を好きなことは、間違いがないのだから。
(言う必要はない)
今の刹那は、自分と暮らしている。
気がつかせる必要はない。
このまま穏やかに日々を過ごしていけばいい。
だが。
ニールの脳裏を自分と同じ顔をした男の顔がよぎった。
自分に詰め寄ってきた時の、怒りと諦めと、やるせなさとを混ぜ合わせた、弟の表情が。
(手を離したのはお前だ、ライル)
あの時、弟に放った言葉を再び胸に呟き、
ニールは棘のように引っかかる感情に蓋をして、黒髪の愛しい存在を、強く腕に抱いた。
それから1ヶ月がたった。
ニールの部屋のリビングの窓から、外の景色を見つめながら、刹那は思った。
このままではいけない、と。
刹那は今でも、別れの夜を思い出す。
あの時、刹那はライルに言えなかったことがある。
「お前は兄とは違う」と彼に言いたかった。
好きなのはお前だ、と言いたかった。
だが、ライルがそれを信じない限り、何を言っても意味がなかった。
言葉が届かないのなら、信じてもらう為にはどうしたらいい。
心だって、ライルがそう思っている限り、届かないのだ。
自分は何もできない。
そのことでライルが苦しんでいるのなら、楽にしてやりたかった。
だから別れることを承諾した。
ライルに対する愛しさは、今も消えていなかった。
わかっている。
自分はニールをライルと比べている。
ニールはライルが、こうであったら、という理想だった。
彼自身のことも確かに好きだ。だが比べてしまうのだ。
ニールの中にライルを見てしまうのだ。
それはニールにもライルにも誠実でない気がした。
誰だって、一番でいたい。比較されて、劣る側に立つことなど、誰も望んではいない。
このまま気がつかなかったことにすればいい。
ニールならいつか忘れさせてくれる、ライルのことを。
それは確信だった。
彼はそれだけの男だ。
だからこそ、このままここに居続けてはいけない。
彼に甘えていてはいけないのだ、どちらかを選ばなければ。
刹那はそう、考えるようになっていた。
今日言おうか、明日言おうかと考える内に、1週間がたった。
先に帰宅した刹那が、夕食の準備をしている時に、ニールが帰ってきた。
ニールは刹那を手伝って、二人で手早く支度を済ませ、夕食を摂った。
リビングに移動し、食後のコーヒーを飲みながら、ニールが切り出した。
「刹那、この前のレポートの結果で、イオリア・ラボ行きが決まった」
刹那は目を見開いた。
「凄いじゃないか、ニール」
惑星連合で地球に次ぐ権威のある星、ソレスタル・ビーイング。
そこにあるイオリア・ラボは連合最高の頭脳集団と言われている。
ニールはその研究員に認められたのだった。
「一緒にこないか、刹那。俺の家族になって」
期間は2年。
連れていけるのは家族だけなんだ。俺はお前を連れて行きたい。
称賛にも応えず、ニールはそう言って刹那を見つめた。
それはプロポーズと言っていい言葉だった。
刹那の目が更に大きく見開かれる。
「俺は…」
刹那はニールの申し出に、すぐに返事をすることができなかった。
ニールは言葉が続かない刹那の顔を、じっと見つめた後で言った。
「わかってるよ、刹那」
ニールは、刹那の頬を撫でた。
「ライルの所に、戻りたいんだろ?」
刹那が弾かれたように顔を上げた。
呆然としてニールの瞳を見つめる。
諦めのにも似た表情が、そこには浮かんでいた。
「どうして…」
それだけ言うのが、精一杯だった。
ニールは苦く笑った。
「わかるよ、刹那の一番が誰かなんて」
わからないのはライルだけだ、とニールは言った。
「苦しいんだろ?刹那」
俺への思いが本当の本当じゃないことが。まだライルを思っていることが。
お前は不器用で、真っ直ぐな人間だから。
気持ちに嘘がつけない、誤魔化して俺の傍にいることができない。
この男は―――――、と刹那は思う。
共に暮らして3ヶ月、どうしてここまで彼は自分を理解してくれるのだろう。
優しく包みこんで、自分を楽にしてくれるのだろう。
ライルと比べていることは確かだ。
だがニールに魅かれていた気持ちにも嘘はないのだ。
そして彼は、自分を思ってくれている。ライルと同じように。
なのに手を離そうとしてくれている。
刹那を苦しませたくないと、刹那の気持ちを優先させてくれる。
赦してくれる、揺れる自分を。
「……ニールを一番に愛せたらよかった。
ライルを知る前に、ニールに会えていたら良かった。
そうしたら……!」
こうして迷うこともなかった筈なのに。
済まない、と刹那は言った。
「謝るな、刹那。お前は悪くない」
誰も悪くないんだ、そして誰にも原因がある。
俺は二番でも、よかったんだけどな。刹那がそれでよければ。
ぽつり、と言ったニールの言葉に、刹那の瞳から、涙が零れた。
「すまない」
刹那は堪らず、ニールに抱きついた。
「謝るなって言ったろ」
ニールは刹那の背中を抱きしめ、あやすように叩いた。
「……好きだったぜ、刹那」
過去形にしてくれたニールの優しさが、刹那の胸を更に締め付けた。
「俺もだ……ニール」
二人はそうして、いつまでも抱き合っていた。
翌日、ボストンバックに荷物を詰め、部屋を出ていった刹那を、
ニールはリビングの窓から見送った。
『俺はいつも兄さんの影だ。そんな気持ちなんてわからないよな!』
(わかるぜ、ライル。お前の気持ち)
だから刹那から手を離したんだ。
刹那がそれを望んでいたこともある。
そしてここから、ようやく始めることができる。
ライルへのハンデキャップは全て返した、とニールは思った。
今度は手を離すなよ。
次は手加減なんかしない、本気で奪いにいく。
ニールは遠ざかる刹那の背中を愛おしむように、窓ガラスに触れた。
玄関のブザーが鳴った。
また幻聴か。
ライルはソファから、体を起こした。
この3ヶ月、ベッドで休んだことなど殆どない。
刹那と夜を過ごした場所である。
体を横たえると、刹那の声が、姿が、顔が思い浮かんで、眠れなくなる。
キャンパスに刹那の姿がないことが、更に拍車をかけた。
刹那を取り戻しに行こうとしたことは何度もあった。
だがその度に、自分には見せなかった刹那の笑顔がチラついた。
もしあの時のような光景を、再び目にしたら。
幸せそうな刹那の顔を見たら。
自分は耐えられない。
(どの面さげて会いにいけるってんだ)
仲間やティエリアからは、自業自得だ、と言われ、
自分でもその通りだと思うので、一言も言い返せなかった。
なのに言われたことには腹が立つ。
取り戻したいのだ。
土下座でも何でもして、刹那に縋ればいいのに、それもできない。
妙なプライドだけがあって、これ以上自分を惨めにはしたくなかった。
そのくせ、諦めることもできない。
自分という人間はどうしようもない、と思った。
自らの思考に沈むライルの耳に、再度ブザーの音が響く。
どうやら幻聴ではないらしい。
(誰だ)
刹那かもしれない、という期待はさすがにもう持っていない。
だがドアを開けたライルは、目の前に立っていた人物が、一瞬幻かと疑った。
「……刹那」
「ライル……」
互いの名を呼び合った後、沈黙が支配する。
「中に入っていいか?」
躊躇いがちに、刹那が聞いた。
訳がわからずライルは頷いた。
刹那は3ヶ月前まで暮らしていた部屋の中にボストンバックを担いで入っていった。
本当に刹那なのか。
変らない顔、声と姿。失って初めて気がついた、愛しい存在。
自分の願望が見せた夢ではないのか。
茫然自失していたライルだが、ようやく口を開いた。
「どういう風の吹き回しだ?いまさらここへ来るなんて」
期待は持つな、そして幻想も。
ライルは固い声で訊ねる。
懐かしむように、部屋の様子を眺めていた刹那が振り返った。
自分を見つめる瞳も変らない。
穏やかな光の優しい色だ、とライルは思った。
「ニールと別れてきた」
刹那の宣言に、ライルは目を見開いた。
「どういうことだ?」
「俺はお前が好きなんだ、ライル」
だから、戻ってきた。
刹那がライルの元に近寄ってきた。
信じられない言葉に、刹那の一挙手一投足から、ライルは目を離せないでいた。
「……刹那」
小さく呟いた後、ライルは俯いた。
その肩が小刻みに震えたかと思うと、急に笑いだした。
舞い上がる位に嬉しい言葉だ、だが。
「ライル…?」
気が触れたかと思うくらい高らかに笑ったあと、
ライルは刹那を冷めた目で見つめた。
「残念だな、刹那。少し遅かった」
「何が…」
ライルはもう、自分を吹っ切ったという事だろうか。
刹那の顔が歪んだ。
「知ってるぜ、刹那。兄さんのイオリア・ラボ行きが決まったこと」
お前が戻って来た訳はそれだ。
あれは家族しか連れて行けない。
残念ながら兄さんも、お前をそこまでは思っていなかったんだな。
可哀想に。
一緒にいけないから戻ってきた訳だ、オレのところに。
「違う!信じてくれ」
「信じない。兄さんよりオレを選ぶ奴がいるか」
「ライル、俺は本当に、お前が好きなんだ……!」
刹那がライルのシャツを握りしめた。
ライルの透明感のある碧色の瞳を見上げる。
そこに宿る光は昏く淀んでいた。
こんな瞳を彼はしていただろうか。
刹那は胸の痛みを覚える。
「信じない……信じられるか!」
「ライル……」
ここまで自分を貶めて考える人間だったろうか。
自分がここまで、彼を追い込んでしまったのか。
言葉が届かない。だが諦める訳にはいかない。
「信じてくれ」
何でもする、と刹那は言った。
「何でも…?」
「ああ…何でも」
だから。もう一度自分と始めて欲しい。
「じゃあ、それを証明してみせろ」
ライルは刹那の顎を掴むと、冷たい笑みを浮かべた。
<続>